フォーチュン誌が、ニューヨークのマンハッタンに最近2号店を開店したばかりのトレーダー・ジョーズの記事を掲載している。
あまりメディアを歓迎しない同社の経営内容はあまり公表されていないが、2005年に「Trader Joe’s Adventure」というタイトルの本がでており、今回の記事内容の出典のひとつにもなったと思われる。また、スタンフォード大学の卒業生で、最近亡くなったジョー・クーロム氏は、同大学のウェブサイトにもプロフィルが出ている。
ベンダーに守秘義務を課しているとあるが、それほどでもなく、例えば記事のビデオで出てくる、チャールス・ショーのワインは、ブロンコ・ワイナリーが造っている事は以前から知られており、CEOのフレッド・フランジア氏は、有名なギャロ・ワイナリーの創業者の甥である。
また、トレーダー・ジョーズの豆腐は、ハウス食品が造っていることも知られている。決して価格だけでベンダーを選ぶのではなく、その商品を造っているベストの会社を選ぶと云われている。商取引に関しては、年間の仕入計画、価格、配送などは細かく決められており、決済は現金で無理な返品などもないそうである。
自社配送センターからの配送は、開店時間に合わせて店舗の社員が荷受けなどもかね、営業中に補充もしている。他のチェーンと違い配送トラックは、名前も書いていない普通の小型トラックを使用しコストを削減している。離職率が極端に低いと云われる、同社クルー・メンバー(一般社員)の平均給与は約5万ドルと云われており、フルタイムで働けば中流程度の収入が得られるようにと、創業者ジョー・クーロム氏が決めたそうである。ただし、この額は週50時間がベースになっており、10時間分のオーバータイムが含まれている。店長であるキャプテンになると、基本給が年収8万ドル、利益に応じたボーナスが3万5千ドルくらい、会社による退職年金積み立てが年収の15.4%で、13万ドル余りになるというのが5年前だった。
売上に関しては、業界誌のプログレッシブ・グローサー誌が333店舗で68億ドルと推定しており、344店舗だと70億ドルあまりで80億ドルはそれよりもすこし高い。しかし、数年前サンフランシスコの店舗を訪れたおり、丁度ニューヨークの店舗が開いたばかりで、店のファースト・メートが売上第一位の地位をニューヨークに奪われたと語っていた。その店の売上が年商5千万ドル以上と云っていたので、その半分が平均とすると全体で86億ドルとなり、あたらずとも遠からずと云ったところかもしれない。
どちらにしても驚異的な売上をあげている事は間違いない。品揃えに関しては2,500アイテムと云われており、記事の4,000アイテムよりは若干少ない。そのうち300アイテムくらいは常に入れ替えが行われており、新商品が消費者の好みに合わせて入れられている。以前に比べると最近PBの割合が増えてきており、ヨーロッパの食品に関しては、オーナーであるアルブレクト家(アルディ・ノース)の仕入ノウハウが生かされていると思われる。しかし生鮮食品などは地場商品も多く、西は本社のモンロビア、東はボストンのバイイング・オフィスで仕入られている。
企業売却後10年間経営続けたクーロム氏が辞任した1988年当時26店舗だった同チェーンが、2010年で344店舗という事は、年平均15店舗弱の開店ということである。成長している割には保守的な店舗展開は、株の上場や借金をしないアルディの経営方法を踏襲していると観られる。いずれにしても非常にユニークな小売業であることは間違いない。差別化という事ではこのトレーダー・ジョーズが、アメリカの代表的な小売チェーンであろう。